インデックス投資は勝者のゲーム レビュー
Prime Readingで無料だったので読みました。
インデックス投資は勝者のゲーム──株式市場から確実な利益を得る常識的方法 (ウィザードブックシリーズ Vol.263)
- 作者: ジョン・C・ボーグル,John C. Bogle,長尾慎太郎,藤原玄
- 出版社/メーカー: パンローリング
- 発売日: 2018/05/13
- メディア: 単行本
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総評: +1 (おすすめ!)
インデックス投資を勧める本はいくつかありますが、その中でも特に優れた本だと思いました。 主張はシンプルで原理的、本の構成は端的で読みやすいです。 特に長期投資を始めたいが何をしたら良いか分からない方にオススメの一冊です。
概要
かのVanguard社を設立したJohn. C. Bogleが2007年に記した本の和訳です。
- 作者: John C. Bogle
- 出版社/メーカー: Wiley
- 発売日: 2017/10/16
- メディア: ハードカバー
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Vanguardという時点でどのような主張になるか分かる人もいるかと思いますが……想像通りです。
なお、タイトルにもある「勝者」とは、市場平均に極めて近い投資成果を出せる人を指します。 決して1か月で資産が10倍になることを目指す本ではありません。
本書の主張
本書の主張は非常にシンプルで、下の三単語に集約されます。
「長期」「分散」「低コスト」
- 投資対象は長期で持つべきで、短期的な売買を繰り返しても必ず手数料に負ける
- 分散することで市場平均(≒最適なパフォーマンス)に近づく
- コストは(悪い方向に)裏切らない
すなわち、アクティブ(取引を頻繁にしたり、投資対象を絞ることでインデックスを超えるリターンを狙う)なファンドを使うべきではなく、手数料が限りなく低いインデックス連動のファンドを使って放置すべし、という主張です。
良いところ
低コストインデックスファンドの代表的な会社であるVanguard。その創業者だけあって、主張が明確です。 この本を読めばその利点、またどのような商品を買えば良いのかが分かります。 長期投資のスタイルがまだ定まっていない場合、特に有益な本となるでしょう。
類書と比べてこの本が特徴的なのは、ひたすらシンプルな主張を繰り返すのと、実際の商品紹介(≒Vanguardの宣伝)があることです。これにより読みやすい本に仕上がっています。
また、ちょいちょい含蓄のある言葉が降ってきます。例えば、以下のようなありがたい言葉など。
大きな利益を狙うのではなく……市場平均から得られる数%のリターンで満足するべき
また、ポートフォリオ作成についても記載があり、債権との配分を変えることで投資スタイルに合わせる、と言った実践的な内容も含まれています。
良くないところ
全体として分かりやすいのですが、やや疑問に思った所もあります。 私が理解しきれていないかもしれませんが、ここにまとめておきます。
まず、平均回帰を前提としてアクティブファンドが勝てないと断定していますが、生きてる間に回帰するかどうかは分からないので、そこを仮定するのは正しいのかという疑問があります。 また、もしマーケットに明確なエッジがあり、それを利用できるようなファンドが限られていれば、長期に渡ってインデックスを上回る可能性はあるのではないかと考えられます(皆がそのファンドを使うと必ず負けますが、現実的にはそうならないので)。 これは、証券会社がトレーダーを抱えているのと同じ理由だと思われます。 ただ、一般人からすれば長期投資のインデックスファンドが最適解なのは変わらないですが……。
次に、「○○が優れているのは運用後の歴史が証明している」と書かれている箇所と、「○○が示した直近の利益は所詮ヒストリカルデータなのであてにならない」という相反する発言があります。 「コストを減らす原理に従おうね」程度の記載だけであれば、混乱が無く読みやすかったと思います。
そして、主張には賛成であっても、実践する時は以下の点に気をつける必要があるでしょう。
- Vanguard以外の商品でより有利なものは無いか?
- 指標はどれにするか - 全世界か米国株か?SPDRかMSCIか?日本除く?
- 日本から米国の商品を買うコストは織り込んでいるか?
分散先の考察
本書の中で、著者は「米国株だけに分散すれば十分」と書いています。 分散すればするほど良いという当初の主張と反するように思われますが、著者曰く米ドルから変える無駄が発生することに加え、(雑にまとめると)以下の理由を述べています。
米国の大きな企業はグローバルで、各国から富を吸い上げている。よって米国株で分散投資すれば、それは世界各国に分散投資したのと同じである
うーん、力強い。基軸通貨としての強みもあり、米国人は自国で分散すれば十分というのは頷けるところです。実際、アメリカではVTはあんまり売れていないようです。 少しコストも掛かるので(0.1%)、一概にお勧めしにくいのかもしれません。
とはいえ、何が起こるか分からないという立場で分散投資を勧めるのであれば、VTを勧めるのが筋なように思われます。
まとめ
自社製品の宣伝と米国を前提にしている所はややデメリットですが、長期投資で習うべき原理原則を明確に説明してくれている良書でした。
実践する場合は、国内から買える類似した商品とも比較して、良い投信やETFを探しましょう。 ちなみに、Vanguardの日本支社が出来るとか出来ないとか。安価で買えるようになったら嬉しいですね。